何でも一番!!

2003年9月2日
「何でも一番が好きなんです」

 よく聞く言葉ですよね。でも、それを態度で表すのって簡単じゃないように思いませんか? 

 ところが、本当に実行しちゃう人がいるんです。しかも、高校野球史に残る監督が。

 その人の名は、石川・星稜の山下智茂監督。昭和54年には箕島と球史に残る延長18回の激闘を演じました。ゴジラ松井秀喜の恩師としても有名です。山下監督は毎日選手より先にグランドに来て、1人で整備をしているというのは聞いていたんですが、この夏の甲子園で、もっとびっくりの一番乗りを目撃しました。

 決勝戦の日、山下監督はABCのゲスト解説者として甲子園に来ていたのですが、到着時刻はなんと朝の7時! 開門が10時にもかかわらず、ですよ。まだ入口が開いていない時分から、一般のファンといっしょになって解説者が並んでいるんですから、たまげちゃいます。普通、解説者なんて試合開始1時間から30分ぐらい前に来れば十分だと思うんですが。

 それだけではありません。決勝戦の日は、試合前に両チームの打撃練習があるのですが、山下監督はそれもじっくりと見ます。「何番打者は当たってる」なんてメモをとりながら。正直、記者席でこの打撃練習を見ている人はほとんどいません。たいていタバコでも吸いながら雑談しているか、近くの喫茶店に涼みに行っているか、ってところです。それを山下監督は熱心に見ているわけです。

 聞くところによると、石川県内で山下監督は「いまだに根性野球をやっている」だとか「野球の技術は教えられない」などと言われているらしいです。事実、昨年の夏の練習中も炎天下の練習で倒れた部員が救急車で運ばれた、なんてこともあったとか。ちょうどその時期に「デジタル指導」で短期間に選手の技術をアップさせた遊学館・山本監督が脚光を浴びたものですから、余計に技術云々という話が出てきてしまったようです。

 そんなの余計なお世話。それが山下野球なら、それでもいいじゃないですか。

 僕はそう思います。確かに技術を教えるのは山本先生が上かもしれない。でも、先の決勝戦の日の例を出すまでもなく、最近の世の中にこんなまっすぐな人っているでしょうか。言葉は悪いですが、くそまじめで不器用。それでも、こんなに一生懸命な人はなかなかいないと思います。山下監督だったから、松井もあれだけまじめに育ったのではないでしょうか。

 技術重視の野球か、精神重視の野球か、それは入学する子供たちが選べばいいこと。周りがとやかくいう問題ではありません。山下監督とやりたい、っていう子供たちが、3年間それこそぶっ倒れるぐらい一生懸命練習する。そこからは何か得るものが必ずあるはずです。ひと昔前のスタイルかもしれませんが、そんな野球があってもいいと思います。甲子園に一番乗りする熱い指導者なんて、山下監督以外知りませんから。

「何でも一番が好き」な山下監督も全国で一番にはなっていません(二番、いわゆる準優勝は一度)。1945年生まれで今年58歳。そろそろ…という年齢ですが、これだけ熱い山下監督ならまだまだやってくれることでしょう。平成10年以来出ていない甲子園にあのクリーム色のユニホームが戻ってくることを楽しみに待ちたいと思います。

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